スイッチングレギュレータ(降圧DC-DC)の基板設計

 スイッチングレギュレータは電流の出力が大きい上にスイッチング動作をするため,基板設計にはいくつかの注意が必要です.
 基板のパターン設計によっては,放射ノイズが極端に大きくなる,効率が落ちる(発熱が増える),出力電圧の変動が大きくなる,最悪の場合スイッチング動作が止まる事も有り得ます.
 代表的な注意点は以下のとおりです.

 

 

■電流ループを同一層で最小にする
 スイッチングレギュレータは,大電流が流れる/止まるを繰り返すため,その電流のループ面積が大きいほど配線がアンテナとなって放射ノイズが増大します.特にこのループがビアを介してしまうと,ビアのインダクタンスにより放射ノイズが増大するだけでなく,共振により効率が低下する場合があります.
 以下のリンクに分かり易く最短にすべきループのイメージが載っています.必ずGNDまで含めたループ面積を意識する必要があります.
降圧コンバータのPCBレイアウト手法_P2_電流経路

 

 気をつけるべきループは以下の通りです.

  1. 入力コンデンサ-ICの電源入力-ICのSW出力-コイル-出力コンデンサ-GND-入力コンデンサまでのループ
  2. キャッチダイオード(もしくは内蔵ローサイドFET)-コイル-出力コンデンサ-キャッチダイオード
  3. 入力コンデンサ-ICの電源入力-ICのSW出力-キャッチダイオード-入力コンデンサまでのループ

 

 

■スイッチング動作をするラインは太く短く配線する
 スイッチング電源で最も放射ノイズが多いのはICのSW出力です(次がICの電源入力です).試しにこの部分のパターンにオシロスコープを近づけると,触れていないのにスイッチング波形が観測できます.このパターンを太く短く配線することで,不要な放射ノイズと出力電圧のスパイクノイズを抑えることができます.
 出力電圧のスパイクノイズが大きい場合,この部分のパターンに問題があるケースが多いです.
TI_高速DC/DCコンバータのスイッチノードで発生するリンギングの抑制Part 1/4
TI_高速DC/DCコンバータのスイッチノードで発生するリンギングの抑制Part 2/4
TI_高速DC/DCコンバータのスイッチノードで発生するリンギングの抑制Part 3/4
TI_高速DC/DCコンバータのスイッチノードで発生するリンギングの抑制Part 4/4
maxim_スイッチングレギュレータの基本的なレイアウト手法_浮遊容量と浮遊インダクタンスを最小限に抑える方法

 

 

■GNDを極力広く取る
 GNDは電流のリターンパスを最小にするためだけでなく,シールドとしても効果があるため,可能な限り広く取り,インピーダンスを下げる事で,放射ノイズの低減と電源ノイズの低減が可能です.
EDN_DC-DCコンバータのノイズ対策[実践編] (1/5)_パワーステージ全体/内層のベタGND
降圧コンバータのPCBレイアウト手法_P8_グラウンド

 

 ちなみに,よく言われる事として,パワーGNDとアナログGNDを分離して一点設置するという定石がありますが,ケースバイケースで逆効果となる場合もあるようです.私の周りにはどちらの派閥もいますが,私は共通GNDベタ派です.
EMC のための設計テクニック (第2版) ―― 第5部: プリント基板の設計とレイアウト5.4.4 GNDプレーンを分割しない

 

 

■フィードバックラインは大電流ループを避ける
 大電流ループはノイズ源であり,フィードバックラインはノイズを拾いやすいアナログラインなので,相性は悪いです.絶対に並走させたり近づけたりしないようにしましょう.出力が不安定になる原因になります.また,フィードバックのモニタ点は,コイルと出力コンデンサの接続ラインよりも後段(大電流ループの外)で取らないとコンデンサのESR/ESLによりモニタ点の電圧が変動するため出力が不安定になる原因になります.
降圧コンバータのPCBレイアウト手法_P7_帰還経路を配線する

 

 

■インダクタ下部への配線はしない
 スイッチノードは最大のノイズ源ですが,そのパターンが出力電圧のパターンとの間に容量成分を持っている(物理的に近い)と,ノイズが伝わり,出力電圧のスパイクノイズが大きくなる場合があります.コイルの下までパターンを伸ばしてしまうとノイズ源を伸ばしてしまうため好ましくありません.
 また,インダクタ下部にGNDを配線すると,磁気シールドの弱いコイルの場合,インダクタンスが低下する事があるため注意が必要です.
EDN_DC-DCコンバータのノイズ対策[実践編] (2/5)_出力インダクタ下部
降圧コンバータのPCBレイアウト手法_P6_figure6-c/d良くないインダクタ直下の配線

 

 

■サーマルビアで放熱に気を使う
 スイッチング電源は効率がいいと言ってもある程度発熱します.サーマルパッドがある製品はサーマルビアを打つことでジャンクション温度の上昇を緩和することができます.
降圧コンバータのPCBレイアウト手法_P3_サーマルビアを配置する
熱設計

 

 

参考リンク
降圧コンバータのPCBレイアウト手法
EDN_DC-DCコンバータのノイズ対策[実践編] (1/5)
リニアテクノロジ_アプリケーションノート_電源レイアウトとEMI
リニアテクノロジ_アプリケーションノート_非絶縁型スイッチング電源のPCBレイアウトにおける考慮事項

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