部品温度の実測

デバイスの温度を実測する場合,一般的には熱電対を使用します.熱電対には様々な種類がありますが,部品温度の実測によく使われるのはK型熱電対です.
八光電機_熱電対について:熱電対の種類と特徴

 

 実際に部品温度を測定する場合,以下の様な注意が必要です.

 

■実使用環境に近い状態で測定する.
・恒温槽内の温度差
 使用する環境温度が最高で50℃であった場合,50℃環境を恒温槽で再現することが多いと思います.しかし,恒温槽内で50℃になっているのは,恒温槽内の温度センサです.実際に50℃にしたい場所に熱電対を配置し,そこが50℃になるように恒温槽を設定する必要があります.
・恒温槽内の対流
 恒温槽はブロワで風を送って恒温槽内の温度を平衡させます.従って,風の通り道に測定物を置いてしまうと,空冷されて温度が上がりません.ブロワの風を遮るような工夫が必要です.
・内部温度の平衡
 電源をONすると,測定物は時間に応じて徐々に温度が上がっていき,徐々に安定していきます.平衡状態の温度を測りたい場合は,完全に温度が安定するまで待って温度を判断する必要があります.
・温度設定
 最高温度が50℃であっても,実際のユースケースでは50℃になる時間はごく短いかもしれません.そのような場合,50℃環境での平衡状態の温度を測定する必要はないかも知れません.実際に起こりうるワーストケースを吟味する事で対策が不要と判断できる可能性があります.
・使用ソフト
 組込み機器をソフトウェア制御している場合,マイコンの動作モードによって温度が全く違ってしまう場合があります.テスト用のソフトで測定してしまうと,実際のソフトを組み込んだ時に全く違う結果になることも良く有ります.
・発熱のバラツキ
 発熱部品にもよりますが,物によって発熱が異なることが有ります.マージンが小さい発熱部品については,ロット違い品を複数手配し,温度差を確認する必要があります.

 

■測定による温度ズレを最小限にする
・熱電対の熱引き
 熱電対は金属であり,熱伝導率が高いため,熱電対を接触させると,そこから熱が逃げて実際の温度よりも低くなってしまう場合があります.従って,熱電対は極力線の細い物を使用すべきです.また,熱電対を複数本つけると,その分熱引きも大きくなるため,マージンの小さい部品については最小限の熱電対で測定すべきです.
・熱電対の引き込み穴
 防水等で筐体に隙間がない場合,穴を開けて熱電対を中に入れますが,穴から空気の出入りがあるとそこで温度が下がってしまいます.熱電対と穴の間を塞ぐ等,測定都合による影響を最小限にする必要があります.

 

■熱電対に測定したい場所の熱を伝える
・熱電対と部品の接触
 熱電対を部品に接触させる場合,ちょっとした振動や衝撃で熱電対が浮いてしまっては正しく温度が測定できません.空気の熱伝導率はとても低いため,目に見えないレベルでも浮いてしまうと全く温度が違ってしまいます.一般的にはシリコンペーストなど熱伝導率が高い粘性の有るもので熱電対と部品を接触させ,その上から熱伝導率の高いテープを貼り付けて固定する事が多いです.熱電対はちょっとした事でズレてしまうため,測定する前に熱電対をしっかりと固定する必要があります.ただし,熱伝導率の高いテープを広い面積に貼ってしまうと,それにより熱が平衡してしまうため,測定の手間と精度をうまくバランスさせて実測することが大切です.
・熱電対のねじれ
 熱電対の先端は異なる金属同士が接続されていますが,そこ以外の箇所が接触してしまっていると,接触部分の温度を測ってしまうため,温度が大きくずれてしまいます.特に多いのが,皮膜がなくなっている先端部分がねじれて接触している場合です.必ずねじれを解消し,先端以外が接触しない状態で測定する必要があります.
八光電機_アルミ板の温度測定
・測定するポイント
 ICのサイズが大きい場合に,最も発熱する部位に熱電対を配置する必要があります.発熱部位はサーモグラフィ等で事前に確認しておくとより正確に測定することができます.

 

 

■参考リンク
ハドソン研究所_熱物性ブログ_測定誤差を減らすための熱電対接着の4つのポイント
アンべエスエムティ_なぜ極細・極薄熱電対がいいのか?
ケーヒン技報Vol2(2013)_電装品開発時の温度測定手法の提案
八光電機_アルミ板の温度測定

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