リレーの注意事項

 リレーには様々な注意事項が有ります.特に物理的な接点を持つため,電気的な観点だけでなく,機構的な観点でも注意が必要です.以下に代表的な注意事項を記載します.

 

■チャタリング
 物理的な接点を電磁石で動かして導通させるため,接点通しが接触した時にバウンドし,ON/OFFを高速で繰り返します.この減少をチャタリングといいますが,チャタリングが収まる時間はリレーによって様々で,バラツキ・経時変化も有るため,十分余裕を持った設計をする必要があります.

 

■振動
 物理的な接点を電磁石とバネでON/OFFするため,衝撃や強い振動で接点がON/OFFしてしまう事があります.実際に掛かる衝撃や振動で十分評価する必要があります.これについてもバラツキ・経時変化があるため,十分余裕を持った設計をする必要があります.

 

参考リンク
omron_プリント基板用リレーの注意事項_4-5 「振動・衝撃について」

 

■ディレイ
 物理的な接点を電磁石で導通させるため,電流を流してから電磁石が磁化し,接点が移動し,チャタリングを経て導通するため,実際に導通するまでにはディレイが有ります.この時間はリレーによって様々で,バラツキ・温度特性・経時変化もあるため,十分余裕を持った設計をする必要があります.

 

■アーク放電
 物理的な接点を電磁石で導通させるため,接点が接触する瞬間にどうしてもアーク放電(静電気のような火花が飛ぶ)が起こります.従ってスイッチの接点は徐々に劣化していき,いずれ寿命を迎えるため,放電時間を極力短くする工夫が必要です.場合によっては接点通しが離れなくなる転移現象も起こります.

 

参考リンク
omron_リレーの基礎知識_使用編_直流回路の開閉
omron_プリント基板用リレーの注意事項_3-1-4 「サージキラーについて」
panasonic_リレー使用上の注意_3.接点保護について_転移現象

 

 また,可燃性のガスが発生している箇所で使用すると引火しますので使用は避けましょう.

 

参考リンク
omron_プリント基板リレーの注意事項_4-2 「使用雰囲気について」

 

■突入電流
 リレー内のスイッチが閉じた時,FETと同じく突入電流が流れます.リレーでもFETのSOAに相当するような表がありますので,必ず確認しましょう.突入電流の大きさによって,耐久性も変わってきます.

 

参考リンク
omron_プリント基板用リレーの注意事項
 2-3-2 「開閉容量について」
 3-1-1 「負荷開閉について」
 3-1-4 「サージキラーについて」
 3-1-12 「接点の転移(移転)について」

 

■電極への皮膜形成
 接点の材質によりますが,リレーを長期間開閉しない,もしくは電流があまりにも小さいと,接点に酸化皮膜ができ,接点抵抗が大きくなります.
※接点の材質によっては最少開閉容量(最低限流さなければならない電流)が定められており,その電流によるアーク放電の熱により皮膜が破壊されるように設計されています.開閉動作による接触・摺動・電圧にも接点の清浄効果があります.

 

参考リンク
panasonic_FAQ_メカリレーの接点定格における最小適用負荷とは?
Aitem-Lab_メカスイッチの接点に注目!
omron_一般リレー参考資料_(2)コヒーラ効果
富士通_リレー技術解説_4.1-(1)集中抵抗と境界抵抗-(3)アーク放電による清浄化
omron_プリント基板用リレーの注意事項_3-2-7 「稀ひん度開閉での使用について」
omron_プリント基板用リレーの注意事項_4-3 「悪性ガス雰囲気中(シリコーンガス、硫化ガス、有機ガス)での使用・リレー近傍でのシリコーン含有物の使用について」
富士通_リレー技術資料_5.10-(5)稀頻度開閉の場合は定期的な導通検査をしてください
omron_プリント基板用リレーの注意事項_5-2-5 「コーティング、パッキングを実施する場合」

 

■異物
 物理的な接点を電磁石で導通させるため,可動部分にゴミやホコリが入ると動作を妨げます.また,シリコンガス等が充満している空間では,接点がコーティングされてしまい導通できなくなる危険性も有ります.さらに,結露によって水分が入り込み,氷点下環境になって氷結した場合も動作を妨げる要因になります.

 

参考リンク
omron_プリント基板用リレーの注意事項_
 4-2 「使用雰囲気について」
 4-3 「悪性ガス雰囲気中(シリコーンガス、硫化ガス、有機ガス)での使用・リレー近傍でのシリコーン含有物の使用について」

panasonic_リレー使用上の注意_6-6-5_氷結について

 

■逆起電力
 リレーに内蔵されているコイルに対し電流を流すことでスイッチをON/OFFしますが,コイルの電流を止めた瞬間に,逆起電力によって大きな電圧が発生します.

 

リレーの逆起電力

 

 大きな電圧が発生すると,火花が飛ぶ(スパークする)事があります.スパークした箇所が溶けたり発火したりするのを防ぐため,これを防止する回路を追加する必要があります.具体的には,ダイオードを入れる方法と,RCスナバ回路を入れる方法が一般的です.

 

リレーの逆起電力保護

 

 ただし,保護回路はコイルに電流を流す時間を伸ばすので,リレーがOFFするまでのディレイが伸びる事に注意が必要です.

 

参考リンク
omron_プリント基板用リレーの注意事項_3-2-5 「コイルオフ時のサージ防止について」

 

■相互干渉
 リレー内にはコイルが内蔵されているため,コイルと同じように他の磁気回路からの影響を受けます.特にモーターや基板上のコイル・他のリレーを近くに配置する場合は時期干渉を避けるような工夫が必要です.

 

omron_プリント基板用リレーの注意事項_7-4-A相互磁気干渉について
omron_プリント基板用リレーの注意事項_4-6 「外部磁界について」

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